インターネットの発展からブロックチェーンが学べる社会との"コンセンサス"

1900年代終わりから2000年代に起きたインターネットの発展とその広がりにより、私たちの社会構造はこの20年-30年で大きく変貌を遂げました。そして今、そのインターネットと同様に、またはそれ以上の社会的変革をもたらす可能性があるといわれているのが、”ブロックチェーン”です。

インターネットの成長過程とブロックチェーンのそれはよく比較されることが多く、現在のブロックチェーンは未だインターネット黎明期と同等の社会的影響力にとどまるともいわれます。

今回は、インターネットの発展を振り返るとともにブロックチェーンの“今”について見ていきたいと思います。

インターネットがもたらした“もの”

インターネットは、世界中の誰もが“情報”という価値に対してアクセスできる新たな形の価値を創出したといわれています。また、スマートフォンという持ち運びができるデバイスが開発されたことにより、インターネットの柔軟性はより一層大きく強化されつつあります。確かに、周りを見渡せばスマートフォンの所有は一般化してきており、居場所に関係なく誰でもインターネットを通して、自分の知りたい情報や教育の機会を手に入れる機会が均等に配分されています。

例えば、東南アジアの若年層の間では、銀行口座を所持している人口割合より、スマートフォンを所持している人口割合の方が上回る傾向を見せているといわれているほど、インターネットは世界的に流通しているものであるといえます。ICOプロジェクトとして著名なOmiseGo(OMG)などはこの傾向に着目し、東南アジアにおける共通通貨を仮想通貨OMG、ペイメントのインフラをOmise Paymentとして成り立たせることを1つの目標に置き、挑戦を続けています。

インターネットが誕生する前は、ある特定の“情報”にアクセスするためには、個人の移動が求められました。例を挙げると、明治時代では岩倉使節団のようにアメリカや欧州へ直接おもむき西洋文明の情報収集に努め、自国の文明開発に役立てていました。

しかし、現在であればインターネットを通して、世界中のニュースや情報を瞬時に知ることが可能であり、Skypeなどのオンライン通話システムを用いればリアルタイムで世界の誰とでも交流を行えます。

このように、インターネットは“情報”に対して移動の自由という価値を付与し、日常生活におけるインフラとして、現代では必要不可欠な存在となっています。

インターネットの変遷とブロックチェーンの共通点

では、インターネットはいつ頃から私たちにとって“当たり前”な存在へと変貌を遂げたのでしょうか。インターネットという概念が社会構造に入り込んできた時は、一般的に1990年代前半からだといわれています。その先頭を切っていたのがNetscape Communications社が開発・運営を行っていたNetscape Navigator(以下、Netscape)と呼ばれるブラウザでした。

Netscapeは企業や家庭内のパソコンに導入され、ブラウジングを行う際の一般的な方法として定着しつつありました。しかし、1995年にマイクロソフトによって開発されたOSであるWindows95に内蔵されたInternet Explorer(IE)の登場により、状況は急変します。

いわゆる第一次ブラウザ戦争と呼ばれるNetscape対Internet ExplorerはIEが勝利を収めることになります。しかし、現在(2018年)私たちが日常でIEを利用してインターネットにアクセスする機会は多いとはいえず、基本的にはGoogleが提供するChromeを用いることが多いのではないでしょうか。

これは、以下の図が示すブラウザ利用者の散布図によって明確に証明されており、IEは、2009年ごろには70%を超えるシェア率を誇っていたのに対し、2015年には全体の15%程度のまで利用者の急落が起きていることがわかります。(Chromeを始めとするその他のブラウザ間のユーザー数争いは、第二次ブラウザ戦争と呼ばれています。)

では、なぜこのブラウザ戦争においてChromeが一強となり、IEは逆に没落を進めているのでしょうか。その点に関して、以下のような見解があります。

このツイートで示されているとおり、ブラウザ戦争において重要視されたのは以下の5点であり、その結果に示されているように、これら全ての満足度を高く満たしているのがChromeといえるでしょう。

  • ネットワークプロトコルのサポート
  • オペレーティングシステム(OS)のサポート
  • プライバシーと安全性に対する保障
  • ユーザー補助機能
  • 開発者の拡張性

冒頭で示したとおり、現段階におけるブロックチェーンはインターネット黎明期と等しいといわれており、言い換えるとNetscapeが台頭してきた時代と同等であるといえます。つまり、仮にブロックチェーンがインフラとして将来的に社会基盤を支える存在となるとすると、数多くのブロックチェーンが誕生してきている中で勝ち残るカギとなるのは、上記に示した5つのポイントは大きく着目するべき点であることは間違いないでしょう。

また、以下のようにユーザー視点で考えるとさらに分かりやすくなります。
ユーザーは…

  • イーサリアムであろうがどの通貨が勝ち残ろうが気にしない
  • プライベートキーやシードフレーズの仕組みなど気にしない
  • なぜ2段階認証が用いられないのかについて理解していない
  • 長い数字配列(16進法)での表現は好まない
  • シンプルなユーザーネームを求めている
  • なぜ今のクレジットカードやAppStoreクレジットではだめなのかについて理解していない
  • デスクトップに、できれば何もダウンロードしたくないと思っている
  • 複数デバイスで同時に使えるものを求めている

ブロックチェーンの“今”と“コンセンサス”

ブロックチェーンの“今”は、はっきりいって混乱状態にあると私は思っています。

2017年は仮想通貨元年といわれ、一気に『仮想通貨』や『ブロックチェーン』などといった用語が多方面のメディアに取り上げられることが増え始め、新たな投機対象として注目を集めました。2018年はどちらかといえば、 “具体的にブロックチェーンは何を変えるのか?”という問いに対する答えをブロックチェーンコミュニティは、それぞれ模索し始め、議論を行っているという印象を受け、一見すると健全な方向へと向かっているように思えます。しかしながら、一般ユーザー層(ブロックチェーンor仮想通貨=ビットコイン)にその議論が共通理解として及んでいるのかについては、別問題です。

特に日本において、仮想通貨は投機対象というイメージが先行し、ブロックチェーン/仮想通貨=ビットコイン=投機という方程式が一般ユーザー間における共通理解となりつつあり、メディアにおいてもそのような意図をもった報道が多く目立ちます。

また、ブロックチェーンプロジェクトを行うICO企業側も、実際にそのプロジェクトにブロックチェーンが本当に必要なのか?というWHY、加えてブロックチェーンで何が変わるのか?に対するWHATが曖昧なまま、かつ一般ユーザーとのコンセンサス調整を取らずにプロジェクトが黙々と進められています(基本的には失敗へと)。

インターネットが発展した根本的な側面として、それまでにあった既成概念(情報に対してアクセスする手段)が変わり得るということを、一般ユーザーが実体験を元に体感したことにありました。

インターネットが情報に対して価値を付与したように、ブロックチェーンは確かに、世の中の根本的な仕組み、言い換えれば中央集権から分散型社会へ移行するきっかけを生み出す可能性は大いに高いと私は感じています。しかし、開発者 / 運営者側と一般ユーザーとの間にブロックチェーンがもたらす本質的な価値に対する理解は取れておらず、実際に一般ユーザーがその恩恵をインターネットのように感じられる環境も実際には存在しません。

インターネットの進化の過程では、MicrosoftやGoogleの誕生により“ユーザー”のためのツールが数多く開発され、結果的に社会全体がインターネットと上手に融合できたとみることができます。

ブロックチェーンが今後、社会全体と調和を取り“融合”を推し進めるために鍵となってくるブロックチェーン時代のMicrosoftやGoogle、すでに存在しているプロジェクトである可能性もあれば、10年先まで登場しないかもしれません。

ただ忘れてはならないのは、確かにブロックチェーンの概念自体(ビットコイン)は2009年に生まれたため既に9年経ってはいるものの、まだブロックチェーンは黎明期だということです。

Taishi Masubuchi

引用元: ビットコインニュース

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